マンネリは悪である
プロ野球の球団を16に増やそうという議論が再燃している事について、いくつかネットニュースやジャーナリストさんの書かれたものに目を通してみました。
端的に言えば、極めて不満が残るものばかりでした。
例えばこの記事。スポーツナビでも人気のブログを書かれている中溝さんのご意見は、おおむね否定的な内容です。
景気回復? 地域活性? まず語るべくは、夢でも金でもなく、現実だ。
主役の選手をどうやって揃えるのか。16球団拡張案はまずはそこからである。
思考に発展性の欠片も見られません。外国人枠を開放して外国人選手で埋めれば良いという意見にはこの通りです。
元メジャーリーガーだけで組むクリーンナップに助っ人エース。内野陣全員が中南米選手の多国籍軍団といったチーム作り。さらに各球団2名(投手1・野手 1)までアジア国籍の選手は外国籍選手に含まれない「特別アジア枠」という形も候補に挙がるだろう。ただ、繰り返しになるがこの手の改革案にどこまでオー ルドファンがついて来れるのか不安要素は残る。
これから新しいチームを作る上で選手をどうやって集めるか?という話をしているにもかかわらず、「どこまでオー ルドファンがついて来れるのか不安要素は残る」という、おおよそ咬み合わない問題点を挙げられています。
なぜ新しいチームがオールドファンの意向を気にする必要があるのでしょうか?オールドファンというからには既存の球団なり選手なりを見ている人たちなのだから、新しいチームのやり方が気に食わないならそのまま既存の選手やチームを贔屓にし続ければ良いだけの事です。そんなものは放っておけばよいのです。
東北楽天の例を引くまでもなく、新規球団が立ち上げからしばらく苦しむのは、あえて言うまでもありません。にも関わらず、創設初年度から優勝争いが宿命付けられているかのような過度な要求にも首を傾げざるを得ません。
結局のところ、否定のための否定に過ぎないのです。最初に否定することを決めていて、否定するための理屈を脇から肉付けているだけの意見です。
そういった、まるで全国各地に数多あるシャッター通り商店街の店主のようなネガティブシンキングでは、早晩日本プロ野球はマンネリの森に埋もれて、やがて多くの日本人からそっぽを向かれる運命を辿るのではないでしょうか。
エンターテイメントビジネスは、顧客から飽きられたらおしまいであるという危機感を常に持ち続けなければなりません。
近年はプロ野球の観客動員がおおむね右肩上がりで推移するようになりましたが、こうなったキッカケは、間違いなく2004年の球界再編騒動でありましょう。
その後各球団は真剣に集客とはなんぞやと考えるようになりました。それが功を奏しているのだろうと思います。
ですが、今はまだ正攻法の集客手法でそれなりに効果を発揮出来ているから良いものの、この機運がいつまでも続くと考えるのは非常に甘いと言わざるを得ません。
それこそ、いつまでも大型スーパーで飯を食えると思っていたダイエーのように、いつまでも液晶で飯を食えると思っていたシャープのように、いつかは転げ落ちる運命が待ち受けています。
マンネリは、悪なのであります。
ダイエーやシャープと同じ運命を辿らないようにするためにも、常にアグレッシブに、ファンに刺激を与え続ける努力をしていかなければならないはずです。
その為にもプロ野球の球団数を16球団に増やすのは、非常に良い機会となります。
もしもエクスパンションドラフトを行うとすれば、そこでまた新たなドラマが生まれるでしょう。外国人枠が撤廃されれば外国人主体のチームがどのような戦い方をするのか、これまでと全く違う野球を楽しめるでしょう。
そしてなにより、リーグ優勝も日本一も、ますます狭き門になります。熾烈さを増すのです。
僕達プロ野球ファンに、こういったとてつもない刺激を襲うのは間違いありません。
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現状肯定派というのは、だいたいの場合無責任なものだと思います。現状を維持すれば安心安全であるかのように振る舞うものの、それが本当に安心安全だったかどうか、検証もしなければ責任を取らないのも世の常です。
球界の諸先輩方が紡ぎ続けてきたプロ野球の灯火を絶やさず、さらに盛り立てて後世に引き継いでいくためには、現状の維持では到底不足しています。それでは諸先輩方が積み重ねてきた努力の上で胡座をかいているようなものであって、我々現役世代も諸先輩方と同様かそれ以上の努力を重ねて、プロ野球をますますエキサイティングなものにしていかなければならないのではないでしょうか。
ファンの側からも、プロ野球の16球団化を是非やるべきだと機運を高めていきたいと考える次第であります。
以上