木塚敦志二軍投手コーチを語る
1軍復帰を果たした加賀繁投手を見ていて、ふと木塚敦志コーチの事を思い出しました。
木塚コーチの現役時代も加賀投手も、ルーキーの年から1軍のリリーフ投手としてバシバシ起用された右投げサイドハンドという共通点があります。この他にも、酷使につぐ酷使の影響で球速がガクンと落ちて元に戻らなくなり、投球スタイルの変更に四苦八苦する姿がかぶって見えるのです。
ベイスターズでは他にも加藤武治選手(現日ハムコーチ)や吉原道臣選手(引退)が入団初年度から活躍するも、短命で終わる運命を辿っていますので、加賀投手にはぜひとも先人たちの苦労を学び、そして復活して欲しいと強く願うばかりです。
それはそうと、今日は木塚コーチについて僕なりに考えていることを書きたいと思います。
木塚コーチは僕と同い年です。この年代は他にも加藤武治選手(現日ハムコーチ)や横山道哉選手(現スコアラー)や山北茂利選手やマットホワイト選手など、なぜか揃いも揃ってリリーフピッチャーという特徴があります。他にも鶴岡一成選手が同年代ですが、あとは全員リリーフピッチャーでした。
そして、その中でもとりわけ木塚コーチの日々の活躍には励まされ続けてきました。
木塚コーチといえばマウンドに登るときの、ややもすれば過剰ともとれる激しいアクションがおなじみの人です。その面影はコーチになった今でも残っていて、ピッチャーが交代される時に、まるで選手としてマウンドに登るような勢いのダッシュでマウンドに向かうのです。さすがにもう土は掘りませんが、それでも「変わってないなぁ」と、今でも励まされています。
そして、木塚コーチといえば何を置いても優れた人格者であることを触れておかなければなりません。
あれは引退を表明した2010年のシーズン終盤の事でした。既に球団からの公式発表がなされた後のファームの巨人戦(ジャイアンツ球場)になぜか帯同していて、とても驚かされたのです。正式に引退を表明したベテランがファームの遠征に帯同するのは稀だからです。秋のフェニックス・リーグに人手不足でやむを得ず帯同する場合などはありますが、ジャイアンツ球場のような近場の遠征にはまず参加しないのが普通なのです。
そして、では木塚選手は一体何をして過ごしていたかといえば、球拾いやキャッチボールの相手などをやっていたのです。あのお約束の全力疾走で球拾いをしているのです。あれだけの功労者ですから、自分はリラックスして球拾いや用具の片付けは若手選手に任せておけばいいのに、木塚選手は試合終了まで全力疾走で球拾いと用具の片付けを、手伝うというよりはむしろ主体的に率先してやっているのを見て、この人の誠実さは本物だなと唸らされたものでした。
現役中は、栄養費騒動で渦中の人となった一場靖弘選手(引退)に水面下で栄養費を渡したり裏交渉をしたりする役柄を務めていましたが、あれも今思えば、当時のフロントが木塚選手の人柄の良さにつけ込んだ側面もあったのではないかと、残念に思われてなりません。
それから、その後に横浜スタジアムの公式戦で行われた引退試合も見に行きました。僕は1塁側のA指定あたりで見ていたのですが、その年限りで戦力外通告を受けた佐伯選手や大西選手や北川選手をはじめ、他球団に移籍した吉見選手や加藤武治選手が僕のすぐ近くの観客席で木塚選手の最後の勇姿を見届けにきていました。その少し離れた場所には、当時まだロッテに在籍していた小林宏之選手の姿もありました。
まだシーズン中にも関わらず現役の選手が大勢駆けつけるというのも、木塚選手がどれくらい慕われる存在であったかを物語っていました。僕は清原和博選手(オリックス)の引退試合にも足を運びましたが、清原選手の引退試合ですら駆けつけた現役選手は金本選手(阪神)とイチロー選手(マリナーズ)くらいでしたので、相当異例なことだとわかっていただけると思います。
やがてコーチになった木塚コーチですが、始めは尾花政権下で1軍コーチを務め、今は2軍コーチを務めています。コーチになって数年間の足跡を見ていると、あまり芳しい成果が出ていないようです。
今年のファーム開幕戦はヤクルト戸田球場のヤクルト戦でしたが、ファームに帯同していた井納選手にブルペンで「おーい地球人!」と声をかけていたのを覚えています。宇宙人と呼ばれる井納選手にわざわざ地球人と声をかける、どちらかといえば目線を低めにおいて、指導者然とするよりは兄貴分として優しく語りかけているようでした。
薄々感じていた事ですが、木塚コーチは自分には大変厳しく、その反面他人には優し過ぎる所があるように感じます。
ベイスターズには国吉投手や加賀美投手や藤江投手のような若手の注目株が少なくありませんが、皆一様に伸び悩んでいます。その原因の一端として、コーチ陣の優しさがあるように思えてなりません。
例えば、三浦投手は毎年春の自主トレに若手を連れて行きますが、大変残念な事に、三浦投手と一緒に自主トレを行って成績を伸ばした選手はいないも同然です。三嶋投手があのような残念な結果になってしまったり、加賀美投手や小林寛投手が伸び悩んだり、国吉投手が迷走してしまったり、散々な結果で終わっています。
その三浦投手にしても、木塚コーチと並び称される大変な人格者として知られています。いくら味方が酷い守備で足を引っ張っても嫌な顔ひとつしないのは当然で、以前見たバラエティ番組のドッキリ企画で三浦選手を怒らせようと過激な事をされても全く怒る気配も見られないほどでした。
そういう他人に対する優しさが、時に指導者として仇になっていると木塚コーチについても懸念を抱いているのです。
現に、木塚コーチが就任する前に期待されていた眞下投手も伊藤投手もトラヴィス投手も古村投手も物にならず、ドラ一の北方投手の制球難を修正することもできませんでした。技術的な問題もあるでしょうが、二十歳前後の若者を指導していくのに、木塚コーチの優しさが仇になる事は考えられるのではないでしょうか。
ですから、応援する身としては断腸の思いで申し上げますが、コーチとしてはいささか厳しいのではないでしょうか。それよりも木塚コーチの人格の素晴らしさを活かしたスカウト等の仕事のほうが、より明るい将来に結びつくのではないでしょうか。
ちょっと、あまりにも成果が乏し過ぎると、大変残念に感じているのです。
かつてベイスターズを率いた尾花高夫監督は犯罪を犯した人の更生を助ける保護司を務めるような人格者だったと言われています。ですが、その尾花監督をもってしても、学級崩壊状態だった当時のベイスターズを更生させることがままならなかったわけでして、非常に残念ながら、人格だけではどうにもならない事もあるのだと思います。
散々木塚コーチを賞賛するような文章を書いておきながら最後の最後に趣旨が180度転換するような事を書きますが、ベイスターズはこのままでは弱体投手陣を改善させる事もままならないと危惧しています。
なんとか木塚コーチの経歴に不名誉な汚点を残さない為にも、来季は配置転換をお願いしたいと考えている所です。
以上