日本球界はアメリカ留学を復活させるべきだ
50歳まで現役を続けられた事でも知られる元中日の山本昌さんは、まだプロ入りして間もない若い頃に球団主導でアメリカ留学をし、そこでプロで通用するための様々な技術を身につけたと言われています。
また、山本昌さんがアメリカ留学するのと前後して、西武ライオンズの秋山幸二さんやデーブ大久保さんも球団主導でアメリカ留学をして、様々なことを学んできたと言われています。
1980年代後半の、いわゆるバブル景気の時代の出来事です。この頃は景気が良かったのもあってか、春のキャンプをアメリカやオーストラリアで行う球団が非常に多く、その関係でMLBにコネクションが出来て選手の留学に繋がりやすかったのだろうと推測されます。
それ以降は皆さんもよくご存知のようにバブル景気が弾けて、日本球界も大なり小なりそのしわ寄せを被り、春のキャンプを海外から日本国内に戻すようになり、そして選手に海外留学をさせる球団も無くなってしまいました。
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こういう塩梅にバブルが崩壊して以降、選手の育成にかけるコストを渋る傾向が長年続いてきたわけですが、この流れが最近ようやく落ち着き、やはりある程度の投資をするべきだと考える球団が現れ始めました。
例えば巨人がプエルトリコのウインターリーグに若手選手を派遣したり、ソフトバンクや巨人が三軍制を敷いたり、日本ハムが春のキャンプを海外で行うようになったり、オリックスが室内練習場を整えて24時間いつでも練習出来るようにするなど、セリーグパリーグ問わず、育成にお金をかけるムードが盛り上がっております。
そして、こういう時期だからこそ僕が提唱したいのが、かつてのように選手にアメリカ留学をさせるべきだ、という事です。
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今年の夏に問題を起こしてオリックスを退団する事になった奥浪選手などは、特にアメリカ留学をさせたかった選手の代表的な存在です。
バッターとしての素質は一線級のものがあって、高卒一年目からフレッシュオールスターで活躍してお立ち台に上がり、3年目の昨年は一軍でも結果を残しつつあった矢先の出来事でしたから、問題を起こして退団すると聞いた時には、とにかく残念でなりませんでした。
問題の内容を考えれば、本人の精神的に至らない所が少なからずあったのは事実でしょう。だからこそ、言葉もよくわからない厳しい環境に送り込んで、野球の技術に留まらない様々な物事をアメリカ留学で身につけて、一皮むけて帰国することが出来たのではないだろうかと、実は僕は退団するよりも前の、問題を起こして謹慎処分を受けたというニュースを聞いた時に考えていたのでした。
それというのも、先述した山本昌さんが若い頃に技術的にも精神的にも未熟だったものの、アメリカ留学を通じてメキメキ成長したという話が僕の念頭にあったから、でした。
いくらプロだからと言っても、所詮は高校を出て1年や3年の若者の考えることですから、甘い部分や間違った部分も少なからずあると思います。ですから、アメリカの厳しい環境に送り込むことによって、これまでの恵まれた環境では得られなかった学びを得て、一皮むけてくる事が必要なのではないでしょうか。
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狭い世界に閉じこもって、狭い世界の了見の中だけで生きていく事には何の意味もありませんし、百害あって一利なしです。様々な知見に触れて、その中から自分にあったものを選んで学んでいく事が、人間を成長させる上で重要です。
それはプロ野球選手とて同じであろうと思います。
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選手だけでなく、コーチもアメリカ留学をするべきではないでしょうか。
今年の5月にこういうニュースが有りました。ベイスターズがあまり効率の良くない練習をしているのをパットン選手が疑問に思っている、という話です。
これもやはり、狭い世界に凝り固まる事の弊害ではないかと思っています。
先述したデーブ大久保さんが西武のコーチ時代にアーリーワークを取り入れて結果を出したのはアメリカ留学の賜物ですけれども、ベイスターズの首脳陣にはそういった発展性みたいなものが見当たらないのであります。
ですから僕は考えるに、球団は今後、引退した選手の中から将来コーチとして球団に残したい人材については、球団の経費でアメリカ留学をさせるべきではないでしょうか。
それこそ、選手のアメリカ留学とセットでも良いと思います。選手のお目付け役という意味と、今後コーチをする上で知見を得るためのコーチ留学という意味とで、2つのメリットが得られるのではないでしょうか。
最近はチームでプレーした経験のある外国人選手を駐米スカウトとして雇用するケースが結構ありますけれども、そういった人たちに現地のコーディネーターも務めてもらえば、様々な物事が捗るのではないでしょうか。
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僕はアメリカの野球が全て正しいなどと言うつもりも無ければ、そのような考えもありません。
ただ、様々な知見を得て、取捨選択の幅を広げる必要があると考えているだけです。
日本プロ野球界の育成システムは昭和50年代から、あまり大きく変わった様子がありません。
いまだに「地獄の伊東キャンプの復活を!」みたいな話が真顔で語られているのを見ますと、これではいつまで経っても日本野球が進歩しないし、トッププレイヤーのアメリカ移籍は収まらないままだろうと思うのです。
僕は趣味の一環で日本の近現代史、とりわけ昭和初期から日中戦争、大東亜戦争に至るまでを書いた本などをちょくちょく読んでいるのですが、このあたりの日本人や旧軍の精神性が、いまだに日本球界に深く根ざしているように思えるし、これではいけないのでは?とも考えております。
だからそういった気風を打破すべく、選手やコーチを定期的にアメリカ留学させるべきではないかと考えているのですが、皆様方はいかがお考えでしょうか?
以上