石川雄洋選手について語る
僕は日頃2軍を中心に見ておりますが、しかし2軍だけを見ているわけではありません。
2軍で活躍している選手について「そろそろ1軍に」という思いを抱き、では1軍に上がる余地は残されているだろうかと1軍の様子を見るのは日常茶飯事です。そもそもシーズン中でも球場に足を運べるのは30試合足らずですから、それ以外はテレビでの野球観戦です。テレビでは2軍の中継は殆ど行われませんので、したがって見る試合の割合は1軍の方が多いという事になります。
その視点で見ていて、ベイスターズで最も気になる選手といえば石川雄洋選手です。
特に石川選手が好きとか嫌いとかの理由ではなく、近年のベイスターズの野手で1軍に定着し続けているのが石川選手以外に居ないからです。
今シーズンベイスターズの主力として働いた野手の中では、筒香選手も梶谷選手も今年初めて(ほぼ)フルシーズン1軍で過ごした選手ですし、黒羽根選手もここ2~3年定着しレギュラーとして働いたのも今年が初めて、山崎選手も2~3年前まで2軍の控えに甘んじていた時期が少なからずありました。よくよく見てみると、石川選手以外は皆、本当に入れ替わり立ち代りなのがわかります。
ですから、否が応でも石川選手が目につくのです。
その石川選手は今年、1軍定着以来では最低の成績に落ち込んでしまいました。
2010年にはシーズンを通して出場して打率.294で盗塁はリーグ2位の36個をマークしたほどの選手が、今年はセリーグの打率ランキングでワースト2位へ、谷底に落っこちてしまいました。キャリアの浅い選手がプロの壁にぶち当たるとか、体力の衰えが隠し切れないベテラン選手というわけでもないのに、この下降ぶりにはあらゆる意味で残念に思われてならないものがありました。
その理由は色々あると思いますが、一つ言える事としては、ベイスターズは石川選手に色んなものを覆い被せ過ぎているのではないでしょうか。
まず、口下手であまり積極的にコミュニケーションを取るタイプでないと言われる石川選手にキャプテンを任せたのは、やはり負担が重すぎたのではないでしょうか。そして、やはり器用とはいえない守備の面で、セカンドを守ったりショートを守ったり外野を守ったり、あまりにも便利屋として使いすぎたのではないでしょうか。
皆さんも周囲に生真面目な人がいたら、その人の事を思い出してみて欲しいのです。職場や学校でちょっとした役職を任された時、生真面目な人ほどあれこれ考え過ぎてしまうものです。傍から見れば「そんなに気負う必要無いのに」と思えることをくよくよ思い悩んでしまうのが生真面目な人です。
口下手で、どうもそういった気配の漂う石川選手には、キャプテンを任せつつ打順も守備位置も年がら年中コロコロと替えてしまうようでは、それこそ永遠に思い悩み続け、本来の能力を出しきれなくなってしまうのではないでしょうか。
では、だからといって石川選手をポイ捨てしても良いとは僕は思いません。若くして打率.294で36盗塁を達成できる選手なのですから、彼にとって心底頑張れる環境整備を出来さえすれば、それと同じかそれ以上の成績を残せるはずだと思うからです。打率3割で30~40盗塁をマークできる選手を、そうそう気安く捨てるわけにはいかないと思います。だからこそもっと大切に扱うべきです。
そんな石川選手にとって、来シーズンは2つのチャンスが訪れます。
まずはキャプテンの任から解き放たれた事。もう一つは名伯楽の大村打撃コーチが1軍担当になる事です。キャプテンから離れたことで自分の鍛錬に集中でき、なおかつ筒香選手や柳田選手の覚醒を後押しした大村打撃コーチに打撃指導を受けられさえすれば、少なくとも元通りの力を取り戻す位は期待できるはずです。もっと上に飛躍する事も期待できるでしょう。
あとは、やはり守備位置を固定すべきだと思います。石川選手にとって最も適したポジションは、現時点ではセカンドではないでしょうか。グリエル選手の去就が注目ですが、仮にグリエル選手が来シーズンもベイスターズでプレーしてくれるとしても、グリエル選手がサードで石川選手をセカンドに固定すべきです。あとはバルディリス選手かロペス選手のいずれかを外野にコンバートしてもらえば良いのではないでしょうか。
打順に関してもなるべくコロコロと替えるべきではありません。出塁後の前後の選手と呼吸や、打ち取られた直後の意見交換の内容など、打順に起因するコミュニケーションも重要です。1番が梶谷選手になるか荒波選手になるかで話は変わりますが、1番梶谷2番石川で2人とも盗塁自由のグリーンライトで走りまくる態勢になれば相手バッテリーに与える脅威のほどは相当なものになる筈です。まず2人が塁に出ている内は盗塁を恐れて落ちるボールや緩いボールを投げづらくなる筈です。足の速い選手を1~2番に置く意味を最大限発揮させるのに石川選手ほどふさわしい選手はおりません。
もう一つ注意しなければならないのが、石川選手は順調に行くと来シーズン中に国内FAの資格を取得する事です。石川選手が大過なく来シーズンを終えた場合、国内FAの資格を取得し、年俸順のランクはBランクになるだろうと推測されます。ですから、石川選手の獲得を目論む球団がいた場合人的補償の必要が迫られますが、もし来季の石川選手がキャリアハイの成績を残すような事があれば、人的補償を覚悟の上で獲得に乗り出す球団も出てくるのではないでしょうか。
FA入団1年目の片岡選手が思うような活躍ができなかった巨人などは、セカンドのレギュラーが固定されないまま来シーズンのストーブリーグに突入し、石川選手の獲得に乗り出す可能性もあるのではないでしょうか。
いずれにせよ、来シーズンの石川選手は色々な意味で注目すべき存在だと思います。中畑監督のラストイヤーに華を添えるべく大活躍するのか、それともそのまま萎んでしまうのか。じっくりと見守っていきたいと思います。
以上