餅は餅屋で、という話
昨日の侍ジャパンの試合を悔しい思いで見届けました。野球の試合でこんなに悔しい思いをしたのは久しぶりです。
ただ、僕としてはやみくもに悔しさを発露しても仕方がないですから、なぜこうなってしまったのか、僕なりに考えようとも思いました。
そしてその一つの結論として、高度に分業化した現代野球においては、「餅は餅屋で」の格言を肝に銘じなければならないという結論に至りました。
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今回の侍ジャパンに選出されたピッチャー13人のうち、今季の公式戦で主に先発として起用されたピッチャーが9人、リリーフや抑えとして起用されたピッチャーは4人でした。
主に先発:菅野、則本、大谷、前田、西、大野、小川、武田、牧田
主に中継:松井、澤村、増井、山崎
(背番号順、敬称略)
このメンバーを決めた時点で、本職が先発なのにプレミア12ではリリーフに回る選手が少なからず出ることを想定していたのだと思いますし、「彼らなら先発でもリリーフでも高度な能力を発揮できるだろう」と見込まれていたのだろうと思います。
ですが、その見込というか見通しが甘かったという事だと思います。
プレミア12が始まる前の準備期間は、ほとんど無いと言って差し支えない短い期間でした。この短い期間に先発からリリーフへ調整方法を切り替えるのは、どちらの経験も豊富にあるようなピッチャーでなければ非常に難しかったのではないでしょうか。
また、準備期間が短いのは前からわかっていた事なのだから、そこは無理をせずに公式戦でもリリーフで投げていた選手を中心にメンバーを選んでおく必要があったのではないでしょうか。
リリーフピッチャーが4人しかいないというのは、あまりにも無防備というか、強引に過ぎたのではないでしょうか。
また、古いタイプの考え方をする人の中には「気迫で乗り切れ」などと精神論をぶち上げる人や、「リリーフは先発失格の選手が務めるポジション」のような先発至上主義者がまだまだおられるようですが、現役の選手は現代の高度に分業化された野球の世界で戦っているわけで、そういう一昔前の概念とは切り離して考えなければならない筈です。
むろんピッチャーだけの問題ではありません。昨日の試合は攻撃面でも粗さが目立ちましたし、大艦巨砲主義的な戦い方が裏目に出たという印象を持たざるを得ません。
選手をはじめ、現場の方々のご努力には一点の曇りも無かったと思います。それよりもむしろ、その上の方の考え方に問題があったと言わざるを得ないのではないでしょうか。
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第二次世界大戦では世界が実に様々な最新兵器を駆使して戦いに挑んだのに比べて、我が国は旧態依然とした、日露戦争や第一次世界大戦の時のような概念のまま大艦巨砲主義、兵站軽視で突き進んで、大敗を喫しました。
世の中をよく見ず、己の思い込みで突っ走った事が大きな敗因となったわけです。
ひるがえって今回の侍ジャパンも、第二次世界大戦の時と同じように、現場よりももっと上の方の現状認識不足がこのような惨めな結果を招いたと評さざるを得ません。
果たして、代表監督は指導者としての経験がない小久保監督で良かったのか。コーチ陣にしても、国際試合の指導経験があるのが鹿取コーチただ一人しかいない布陣で良かったのか。反省すべきポイントは数多あると思います。
選手や監督だけを目の敵にしてバッシングするだけでは北京五輪や前回のWBCの失敗と同じであり、あまり意味の有ることに思えません。
あくまで冷静に淡々と振り返って、後々に活かしていきたいものだと思います。
以上