ベイスターズを二軍中心に見守るブログ 本店

毎年20~30試合ほどベイスターズ二軍の試合に足を運ぶ我慢強い男のブログ。野球関連の問題提起や将来へ向けた改革提案等も

戦力外通告を受けたベイスターズ戦士たち ~その3~

 僕は今から半月少々前に「3年目の選手たち ~其の1~」と「3年目の選手たち ~其の2~」という2つのブログエントリーを書きました。

 それは、その当時から嫌な予感をしていたからでした。それというのも、9月27日に行われたファーム最終戦で、菊池選手と古村選手がボールボーイを務めるのを見たからでした。今季の横須賀スタジアムのボールボーイは、試合の前半は控えの野手が務め、後半は出番を終えた投手が務めるのが原則だったのに、この日に限って全く登板していない2人がボールボーイを務めているのは、きっと何かの前触れだと思われたからです。

 その予感は半分は的中してしまいましたが、残りの半分は外れました。まさか投手4人全員が戦力外になるとは思ってもみなかったからです。2年目から育成落ちしてしまった古村選手や佐村選手はともかく、北方選手と伊藤選手は特に予想外も予想外で、それは驚きなどと生易しい言葉では形容できないほどの大きなショックを受けました。

 そのショックや憤りなどはもう充分書いたのでいいですが、今日これから書く4名の高卒3年目選手たちには、僕はあんまり厳しい言葉を書けません。気の毒だと思うからです。いつもは色んな選手や首脳陣に対して辛辣な言葉を書いていますが、高卒3年目の子供みたいな選手に、そんなに厳しい言葉を向ける気にはなれないのです。

 そういったわけで、4名の選手について書き始めたいと思います。

■28番 北方悠誠選手

 2011年秋のドラフト会議で1位指名されて入団した北方選手でしたが、公式戦のデビューはファーム公式戦も終盤に差し迫った秋になってからのことでした。ドラフト1位の高卒投手がなかなか試合に出て来られないのは田中健二朗選手の時で慣れているので特別ヤキモキしたりはしませんでしたが、それでも北方選手の公式戦デビューをたまたま目にした時はとても嬉しかったのを覚えています。

 横須賀スタジアムの試合にリリーフで上がったのですが、最初の打者から7球連続くらいボール球が続き、球場内がどよめいたものです。その年はその後数試合を投げましたが、被安打も与四球もイニング数を上回るほどで、率直に言って高校時代より悪くなっていると感じました。高校野球はプロよりもいくらかストライクゾーンが広いらしいですが、それでもあれだけ酷い内容で甲子園など出られる筈もありませんので、したがって、入団からデビューまでの数カ月間の過ごし方に何らかの問題があったように思えてなりませんでした。

 2年目も制球難は続きました。2年目になって多少慣れてきた部分はあったのでしょうが、開幕からしばらくは1年目とさほど違わないように見えました。球が速いのは見ての通りですが、よく死球をあててしまいますので、投球が打者の身体に当たった瞬間の「ビチッ」という音と苦痛に顔を歪ませる打者の姿も球速の分だけ強度を増しているように見えました。シーズンを追うごとに徐々に良くなってきてはいましたが、何か投球フォームに工夫しているような様子は見えず、やみくもに投げている感じがありました。

 3年目の北方選手は、まさかその年限りで戦力外になるとは想像もできないほど、プロ入り以来最高の期待をかけられてのキャンプ入りを果たしました。オフの間にプレーしてきた台湾のウインターリーグで好投した事が評価されたという話で、中畑監督自らセットアッパー候補と持ち上げるほどでした。ですが、期待感は日を追うごとに落ちていき、開幕を例年通りファームで迎え、そのファームでさえマウンドに上がる機会を激減させてしまいました。シーズン中にはフォームをサイドスローに変えるというニュースが流れ、そして再び元に戻すというドタバタに明け暮れて、そしてあっという間の戦力外と相成ったわけです。

 彼の長所が豪速球であるのは皆さんも既にご存知だと思いますが、もうひとつ見逃せないのが、タフな精神力です。相手打者に死球を当ててしまっても、次打者に遠慮無く内角攻めをできる、まるでメジャーリーガーのような精神力が彼の持ち味だと僕は思います。人に迷惑をかけてもケロリとしていられる精神力というのは一般社会において全く評価に値しない事ですが、プロ野球の、特に投手にはむしろ必要な要素です。かつてベイスターズに在籍した東投手は清原選手に死球を当てて以降投球内容に精彩を欠くようになりましたが、プロの投手はケロリとしていられる位の方が好ましいのです。それが北方選手の重要な長所なのです。

 彼の最大の短所である制球難は、あの投球フォームにカギがあるように思えてなりません。投球フォームの矯正に実績のある佐藤義則さんのような名コーチに見ていただければ、たちどころに制球力が向上して、すぐに1軍に通用する投手になれると思うのです。なによりあの豪速球と精神力は捨てがたい魅力があります。

 まだ20歳と若いですし、投手陣の育成に自信のあるチームもあると思いますので、彼はトライアウト直後の解禁日にいの一番に次の働き場が見つかると信じています。そこで力をつけて、自分を捨てたベイスターズ首脳陣を見返してやって欲しいと思います。

■67番 伊藤拓郎選手

 今回戦力外通告を受けた3年目の4人の中で唯一1軍出場の経験を持つのが伊藤選手です。高校時代の故障でデビューの遅れが懸念されましたが、懸念を払拭して同期の投手で一番の出世頭になりました。たった2試合の登板ではありましたが、来季以降の飛躍を大いに期待させる内容で、僕は2年目は1軍が主戦場になると確信をしたほどでした。

 2年目はファームで先発として起用されてチームで唯一の規定投球回数をクリアし8勝をマークしました。チームは既に投手多過ぎ問題を抱えており、出番をなかなか得られない同僚が大勢いた中での抜擢で、それだけ首脳陣の評価が高いことを伺わせました。ですが、1軍昇格はなりませんでした。今年と違って去年の1軍はそれほど先発ローテに恵まれていたとは言えない状況であったのに、どうして彼をファームに置き続けるのか、僕には理解できませんでした。肩の故障歴があるから大事にしているとはいえ、先発起用ならファームで投げるのと比べてそこまで大きな追加負担にはならない筈ですから、その首脳陣の判断は不可解だと感じました。

 そして今年です。今年はもう当たり前のように1軍の先発ローテ争いをするものだとばかり考えていましたが、蓋を開けてみれば、1軍で先発どころかファームでもたまにリリーフでマウンドに上がるだけで、しかも投球フォームが去年と違って妙に腕の縮こまった迫力に欠けるものに変わってしまっていました。去年なら月に数試合は彼の先発登板が見られたのですから、この短期間での変わり様は一体何事かと気を揉ませました。小杉選手や須田選手も伊藤選手と全く同じような扱いになっていましたので、伊藤選手一人の問題でもないような感じがしました。

 ファームの選手は故障をしてもニュースとして取り上げられることは稀です。宮崎選手もシーズン終盤に故障していたようでしたが全く知らされぬままでしたでしたから、もしかしたら伊藤選手も故障を再発させたのかもしれないと勘繰っています。しかし、彼はまだ若いのですから、一旦育成枠扱いにして故障の完治を待つことが出来たのではないでしょうか。能力が全く海の物とも山の物ともつかない状態ではないのです。それなりに力のある所を見せてくれたのですから、故障なら故障で治癒を待って欲しかったですし、故障でないなら尚更不可解です。彼は非常に真面目な性格をしていると聞きますので私生活で問題を起こしたとも考えられません。

 僕は7月に木塚投手コーチの手腕を疑問視するエントリーを書きました。こんな予想や読みなど当たらないでくれた方が良かったのですが、図らずしも…という結果に終わってしまいました。

 伊藤選手が故障なのか伸び悩みなのか戦力外の原因はわからずじまいですが、実力は充分プロで通用しますので、どちらかのチームに採用されるのを願っています。

■113番 古村徹選手

 支配下ドラフトで指名されながら、2年目から早くも育成選手とされて、そして3年目の今年限りで戦力外になってしまいました。

 この古村選手は、先に取り上げた北方選手や伊藤選手と比べて試合の出場機会が本当にごく僅かで終わってしまいました。1軍の試合に出られないというのは本人の実力やチーム事情でいくらでも有り得る話ですが、ファームの試合ですら3年通算で1試合のみ、特にどこか故障を抱えていたわけでもないというのは異常です。

 そのたった1試合の登板機会を僕はこの目で見ることが出来ました。戦力外通告が発表されてから当時のことを思い出してみたのですが、今季入団した砂田選手や山下選手と似たようなタイプだった事を思い出しました。球速が遅かったのは少し残念でしたが、無名の公立高校でハードな練習も積まずにあれだけ投げられたのですから、それだけ伸びしろが期待出来ました。たった1試合の登板でも臆すること無く淡々と仕事をこなせたわけですから、新人としては充分だったようにも思います。

 なんといってもあれしか登板機会が無かったので評しようがないのが率直な所ですが、来季はベイスターズで打撃投手を務める予定だと聞きますので、そこで鍛えて、かつての西清孝さんのように現役復帰を成し遂げて欲しいものだと思います。

■114番 トラヴィス選手

 古村選手と同様に2年目から育成登録にされてしまったトラヴィス選手です。トラヴィス選手は今年から登録名をミドルネームでもあるトラヴィスと変更(その前は佐村幹久)しましたが、ベイスターズでは登録名を変えた選手の成功例が殆ど見られません(大洋時代の石井琢朗選手くらい?)。ミツル選手、北川隼行選手、啓二朗選手、一輝選手などなど。野球選手はゲン担ぎをする人が多いと聞きますが、球団首脳部はこの現実を考えなかったのでしょうか。

 それはともかく、この佐村選手は古村選手よりも若干多い5試合の公式戦登板経験を積むことが出来ましたが、彼はとにかく野球経験そのものが非常に浅い人でしたので、ちょっとやそっとで試合に出せる状態に仕上がらないのはルーキーの頃から明らかでした。支配下ドラフト6位の指名でしたが、これが返って彼の肩に重くのしかかってしまったという印象もあります。

 現役続行希望との事ですので、なんとか気長に見守ってくれる球団に巡り会えることを願っております。

                ■

 ひとまず全選手について書き終えましたが、まだまだ釈然としない部分が残っています。それは野球人としてもそうですし、社会人としてもそうです。個人的な事ですが、僕は36歳という若者でも高齢者でもない、真ん中くらいの年代ですが、その立場から見て、若者を使い捨てて自らは一向に責任を取ろうとしない高齢者とか大人のやり口に憤る気持ちがあります。

 今日取り上げた4名が指名されたドラフト会議は前の親会社の首脳陣が手がけたと言われていますが、その時点で経営譲渡の話はある程度煮詰まっていた筈です。経営譲渡が合意したのがドラフト開催の1週間前だからです。そんな状況下で、次の経営陣にドラフトの意向まで擦り合わせをするのは無理だったでしょうが、だからといってあんなに大勢の選手を指名する事が無責任だったと思いますし、その責任が全て現経営陣にのみ降りかかっているというのも不条理です。

 今更誰が悪いだのと責任追及を始めても何もならないとは思いますが、今後二度とこういった無責任な行動ができないような、大人の側の足かせが必要になるのではと、そのように感じている所です。

以上