ベイスターズを二軍中心に見守るブログ 本店

毎年20~30試合ほどベイスターズ二軍の試合に足を運ぶ我慢強い男のブログ。野球関連の問題提起や将来へ向けた改革提案等も

復活を目指す和製大砲たち

 ベイスターズの筒香選手が6日から1軍に復帰する予定だそうです。例の接触トラブルの後で「10日で復帰」や「8月下旬に復帰」など復帰を焦らせるような報道が相次いで出ていましたが、ようやく本当に復帰するようです。

 僕とすれば、こうやって「早く帰ってきて!」と待望する声が出るようになったのが、まずは嬉しい事です。今年の春頃までは低打率にあえぎ、お世辞にも戦力とは呼べない位置にいましたから、それがようやくこうやって戦力として認められる所まで来たというのが感慨深いのです。

 嫌な例えになりますが、古木選手や吉村選手のようなコースを辿ってしまうのではないかと本気で心配していましたので、いよいよ本来の実力を発揮できるようになってホッとしたのです。同じように感じているベイスターズファンも少なくないのではないでしょうか。

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 ベイスターズはかつて、和製大砲だけはよく育つチームだと言われた時期がありました。

 2004年に多村選手がシーズン40本を打った頃、監督は山下大輔さんでしたが、他にも古木選手や村田選手などの将来ホームラン王争いが出来そうな選手が粒ぞろいでした。「今はチームは弱いけども将来が楽しみな選手が少なくない」と言われるようになって10年くらい経ちますが、その始まりがこの時期でした。

 しかし、この将来性豊かな和製大砲たちは、いずれもファンの期待に応えられずに、やがてフェードアウトしていきました。

 古木選手は2002年のシーズン終盤に1軍で物凄い勢いでホームランを量産してテレビ番組で「ハマのゴジラ」と取り上げられたこともありましたので、チームもファンも大変大きな期待をかけたものでしたが、2003年にシーズン22本のホームランを打ったのをピークにそこから下降線を辿って、やがてオリックスにトレードに出されて、そして引退していきました。

 古木選手以上にショックが大きかったのが吉村選手です。

 吉村選手はプロ入り4年目の2006年に打率.311の26本塁打という素晴らしい数字を規定打席未満で成し遂げて、ベイスターズファンの夢と希望を一身に背負うまでの存在になりました。翌年も34本塁打をマークし、この年ブレイクした内川選手村田両選手との球界随一の超強力クリーンナップで、これで向こう10年は安泰だと誰しもが確信したと思います。

 それがどういうわけか、成績がすさまじい勢いで急降下し、遂にはソフトバンクにトレードに出されてしまうまでになりました。2006年2007年頃の夢と希望に満ちた日々は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。2007年はチームもシーズン最後までクライマックスシリーズ争いをし、あとは先発投手さえ揃えば優勝争いも夢ではないと、ものすごいポジティブシンキングに満ち満ちたシーズンオフを過ごした筈だったのに、夢も希望も全て散り散りになってしまいました。

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 ただ、期待の和製大砲が何かの拍子に極端に数字を落としてしまったり、信じられないくらい伸び悩んでいたりするケースはベイスターズに限ったものではないようです。

 代表的なケースは2010年のパ・リーグ本塁打王であるオリックスのT岡田選手。本塁打王を獲った翌年から本塁打が半減し続け、ついに昨年は4本しか打てなくなってしまいました。バッティングフォームが変わったりダイエットをしたり色々と試行錯誤を重ねながら、ようやく今年に入って復活の兆しを見せ始め、打率は少し物足らないものの、本塁打は昨日の時点で19本。このまま本当の意味で復活してくれそうな、そんな雰囲気を醸し出しています。

 現在はパ・リーグ本塁打王の常連となった西武のおかわり中村選手も2005年に交流戦で大活躍してブレイクしたものの、そこからスランプに陥って復活するまでに丸2年の歳月を費やすに至っています。

 この2つの事例を見てみると、本人たちの努力もさることながら、球団もよく我慢したと思います。ある程度の長打力を持つ選手は貴重な存在ですからトレードの噂も少なくありませんでしたし、首脳陣や野球解説者の間でもああだこうだと口を挟みたがる人が少なくなかったと思いますが、まずは余計な雑音をシャットアウトして選手本人が野球に集中できる環境を与えたのが復活に向けてひとつの好材料になったのではないでしょうか。

 いずれにせよ、こういった長期の大スランプから脱するに至った経緯は貴重なノウハウとしてしっかり研究し、後々のために活かしていかなければなりません。スランプの理由は様々あるでしょうが、毎回毎回スランプになる度に手探り状態に戻ってしまうのでは知恵がありません。これは他球団も徹底究明すべきポイントです。

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 一方のベイスターズは、古木選手と吉村選手という2人の若き和製大砲を大スランプから救い出すのに失敗し、貴重な資源を無駄にしてしまいました。

 ファンの中には選手本人たちの自己責任を問う声が少なくないようですが、それはそれとして、チームとして見た場合の事も考えなければなりません。毎年のように外国人スラッガーを補強しなくてはならないのも、元はといえば貴重な和製大砲をダメにしてしまうからであって、これさえ直せば、数限りある外国人枠を他に利用できるようになるわけです。だから選手本人の自己責任ばかり問うているのではなく、チームとして、いかにして和製大砲を大スランプから救い出すか、そこを徹底的に考えていかなければなりません。

 そういった意味において、今回の筒香選手の復活劇というのは、ただ目先の戦力にプラスマイナスが生じたというだけではない、もう一つの意味を持ちます。どうして筒香選手を復活させられたのか?このまま筒香選手が1軍の戦力として本来の実力を発揮できるようになれば、ひとつのノウハウが確立された事になるのです。

 ルーキーの年にたった7打数でプロ入り初ホームランを打てた筒香選手が、高卒2年目にしてたった40試合で8本も本塁打を打てた筒香選手が、どうしてその後2年半も大スランプに陥り続けたのか。そして、なぜ復活できたのか。意義深い研究になるのは間違いありません。

 そのカギを握るのが大村二軍監督と小池打撃コーチの2人である事は間違いありませんので、球団はその事をしっかりと念頭に置いて来季のコーチ人事を行って欲しいと思います。

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 ソフトバンクに出されてしまった吉村選手が復活したかもしれない、そういう数字を残し始めています。

 吉村選手といえばベイスターズ時代からヒーローインタビューで型にはまらないトークをする人でもありましたが、いよいよ吉村選手らしいヒーローインタビューをするようになったらしく、この前はドラえもんの誕生日がどうとか、また次の日は飲酒運転禁止を訴え、これはいよいよ本物の復活かもしれないと、僕も色めきだってきました。ベイスターズで最後に聞いたヒーローインタビューが「親に箱根でも行っておいでと言ってた」という寂しいものでしたから、ドラえもんとか飲酒運転禁止とか、まさに未来が見えてきたという、そんな最近の吉村選手です。

 ですが、悲しいかな、ソフトバンクのレギュラー争いはとんでもないハイレベルな争いです。打率3割未満のレギュラーがキャッチャーと今宮選手くらいしか見当たりません。そこはポジション的に吉村選手ではどうにも狙えそうにない所ですので、なかなかコンスタントに起用してもらえそうにない、そんな状況です。

 ようやく復活できたのに、それが違うユニフォームを着てのものだというのが寂しい限りですけれども、こればかりは仕方がありません。来年はホークスで本塁打王を取り、再来年あたりにFAでベイスターズに帰ってきてくれるよう、心からお祈り申し上げたいと思います。

以上