ベイスターズを二軍中心に見守るブログ 本店

毎年20~30試合ほどベイスターズ二軍の試合に足を運ぶ我慢強い男のブログ。野球関連の問題提起や将来へ向けた改革提案等も

グリエル選手の件を始めとした外国人アスリートの問題について

 まずはベイスターズファンの間で大揺れに揺れているこの問題について。

グリエル最悪退団も 「完治するまで」来日要請拒否、ビザすら取らず

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2015/03/26/kiji/K20150326010053590.html

 いくら耳目を集めたいからとはいえ、随分大袈裟でいい加減な見出しをつけるものだなと思います。それこそどこかの質の悪いまとめサイトのようではありませんか。「最悪退団も」の最悪とは何でしょうか。極論を言えば、どんな選手でも急に退団することはあり得る事態です。現在2軍監督を務めている山下大輔さんが引退を表明したのは開幕直前の3月頃でしたし、大沼幸二選手が引退したのもシーズン中の6月でしたから、それらの事例を踏まえれば「最悪退団も」等というのは誰に対してでも書ける話なのです。つまりは、最初から煽ることありきでつけられた見出しなのです。

 スポニチは嘘をついても責任を問われない気楽な立場を逆手に取って、やりたい放題しています。

 また、この見出しを真に受けて、そして感情的になって「グリエルは日本をなめている!」や「やる気が無い!」と怒っている人は冷静になった方が良いと思います。これらの記事にはキューバ側の生の声が一切含まれていません。片一方の言い分だけを聞いて物事を論じるのは、ある意味欠席裁判をやるようなものです。日本のマスコミの書くことには眉にたっぷりと唾を付けて目を通さなければなりません。さもなくば、マスコミの嘘に踊らされてバカを見るハメになります。

 僕なりに思うのは、キューバ政府にとってグリエル選手が稼ぎ出す外貨の存在がどれくらい大きなウエートを占めるのか、という事です。

 言葉は悪いですが、キューバは貧乏国です。アメリカから長期にわたって経済制裁を受け続けているからです。GDP世界第1位の国から経済制裁を受ければ窮乏するに決まっています。そういうキューバ政府にあって、グリエル選手が稼ぎ出す外貨の存在は、我々の想像をはるかに超える大きなものでありましょう。

 そして、もしもグリエル選手の故障が悪化して今後のプレーに支障をきたすような事にでもなれば、キューバ政府は重要な稼ぎ扶持を失う事になります。それは絶対に避けなければなりません。だからこそキューバ政府がグリエル選手の故障の状態にナーバスになるのも仕方がないのではないでしょうか。

 診断書を要求しても出してこないとか、一旦来日してくれと要望しても梨のつぶてだとか、その行動の裏に何があるのか、あくまでキューバ政府の立場になって考えることで、なんとなく見えてくるものがあるのではないでしょうか。

 むしろ苦言を呈したいのは高田GMの方です。あまりにもペラペラと軽率に喋りすぎています。キューバとの交流には実績(※)がありませんから、自らで外交交渉をしなければならないのです。その立場がわかっているのでしょうか。外交交渉の中身をペラペラと外部に漏らす政府関係者や交渉担当者がどこにいるのでしょうか。先方との関係を不必要にこじらせるだけではないでしょうか。

 TPP交渉に立ち向かう甘利大臣の口の堅さを少しは見習うべきではないでしょうか。

 いずれにせよ感情的になって得るものなど何もありませんから、まずは冷静に、なるべく早く来日して欲しいと願うことが大切なのだと思います。

※ 初出記事に誤りがあったため訂正致しました。ご指摘頂きありがとうございました。

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 もう一つどうしても書いておきたいことがあります。大相撲の横綱白鵬関についてです。

 近年になって白鵬関に対する、ある意味排外主義ともとれるようなメディア報道が目につくようになりました。これには本当に腹が立って、一言言わずには気が済まなくなったのです。大相撲もスポーツだからスポナビブログに書いてもいいだろうと思って、書きます。

 かつては同じモンゴル出身力士でも朝青龍関が悪役で白鵬関が正義の役回りとして報じられる事が多かったと思いますが、朝青龍関引退後の今では、白鵬関の重箱の隅をつつくようにして無理やり悪役に仕立てあげようというムードで一色になっています。

 このままでは、いずれは逸ノ城関もさしたる理由もなくバッシングの矢面に立たされるのではと気が気ではありません。

 白鵬関に対する陰湿なメディア報道と言えば忘れてならないのがこの事件です。

飲みたかっただけ?謎深まる白鵬の一夜明け会見拒否 - 東京スポーツ

http://www.tokyo-sports.co.jp/sports/sumou/273342/

二日酔いポロリ回避? 白鵬「V一夜明け会見」拒否の理由

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/150533

 とまぁ好き勝手書き散らかしておいて、本当の理由が奥様の健康状態を慮っての事だったとわかってからも、これらのマスコミ各社は反省の弁ひとつ書いておりません。恥知らずにも程があります。

 これとは別に、最近もどこかのスポーツ新聞が白鵬関のモンゴルでの発言を捏造だか誤報だかでバッシングをしたと、TBSの昼の情報番組でも取り上げられました。

 横綱だから厳しい言葉の一つや二つは我慢してもらう必要もあるかもしれませんが、それが捏造や誤報ばかりでは、これはあまりにも気の毒です。会見で無言になるのも仕方がないのではないでしょうか。何か口を開けばその度に違う意味で記事を書かれ、自分に対する憎悪の感情を煽り立てられるのですから、そんな状況で誰が喋るでしょうか。

 相撲界は昔から排外主義的でありました。

 僕が子供の頃は小錦さんが横綱になれないのは日本人ではないからだと公然と語られていました。まだネットもない時代、テレビや新聞しか情報源がない小学生の僕の耳にも入ってくる排外主義の数々です。今思えばおぞましい限りですが、残念ながらいまだに繰り返されています。

敗れて観客が万歳/白鵬の葛藤

http://www.nikkansports.com/sports/sumo/news/p-sp-tp3-20150127-1426847.html

 わざわざ遠い日本へやってきて真摯に大相撲に取り組んでくれる白鵬関に、どうしてこんな態度を取れようものかと、全く理解できませんでした。

 日本人力士との物の考え方の違いがあるのは、それはモンゴル人なのだから当然です。やくみつる氏のように重箱の隅をつついて、少しでも日本人と違う所がみつかるとネチネチと文句を言い募る見苦しいファンが大勢います。そんな事なら最初から外国人お断りにすればよいのです。日本人だけではもはや維持することもままならない癖に、何を偉そうな事を言っているのだと、全く腹立たしい限りです。

 我が国では朝鮮半島出身者に対する排外主義的行為を厳しく批判する空気があります。それは大変結構な事ですが、それ以外のアメリカ人や中東人や、それに今回のモンゴル人力士に対しては全くの適用外になっていて、好き放題になっています。これが先進国のやることでしょうか。恥ずべきものだと思います。

 大相撲の御用メディアはこれまでかわいがりの問題や八百長野球賭博の問題に見て見ぬふりをしてきました。その一方で外国人力士に対しては捏造も厭わないという態度でいじめ抜こうとしています。全く自浄作用も良心もない、腐りきった人達だと、そのように思えてなりません。

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 もう一回グリエル選手の話に戻します。

 外国人選手に日本人と同じ考え方を求めるのは、どうにも現実を見ていないのではないかと思えてなりません。

 グリエル選手が台風の中での沖縄行きを拒否したことをいまだに「ワガママ」だと言い放つ人が少なくないようですが、それは日本人的な考えに立っているからそう思えるのであって、グリエル選手がキューバ人である事を忘れてはなりません。

 我が国の一部の階層においては、国や組織のために自分を殺すという思想があります。だいたいの場合それは指導者層が下層民に対して命じているだけで、実際には下層民が自分を殺しても指導者層はのうのうと生き残っていたりするものなのですけど、まぁとにかくそういう思想があって、それがブラック企業などの文化として未だに脈々と息づいています。

 で、その思想に与しない人間に対して、「俺も辛い思いをしているんだからおまえも辛い思いを我慢しろ!」と同調圧力を加えようとする、という流れになっていくわけです。だから故障しているグリエル選手が休もうとすると「ワガママ」という感想になるのです。

 それもあくまで日本固有の、しかも日本のごく一部の人にだけ宿命付けられたものに過ぎないわけで、それをもってして感情的になってグリエル選手をバッシングしようというのは、それは「自らも辛い思いを耐えているんだぞ自慢」みたいな惨めな話にしかならず、見苦しいから止めるべきであります。

 グリエル選手はキューバ人なのです。キューバ人とはどんな人達なのかよくわからないうちは、頭ごなしに怒るのではなく、冷静に事態を見守るべきです。

 僕は以前とある商店街でお店を経営していたのですが、ある時僕の店の隣に中国人カップルが中華料理のお惣菜店をオープンさせたのです。そうすると、コミュニケーションを上手にとれないお年を召した近所の商店主たちが、あることないこと言いふらすようになったのです。「あそこの惣菜は食べられたものじゃないわよ!(食べたこと無いけど)」みたいな悪口が平然と飛び交うようになったのです。

 しかし、その中国人カップルたちも話してみると実に良い人達なのです。朝9時から夜9時まで1日も休むこと無く黙々と働き、日本式の挨拶の習得にも熱心で、何か買えばサービスも旺盛で、むしろ近隣のサービス精神ゼロの商店主たちに爪の垢を飲ませてやりたいと思ったほどでした。

 ただちょっと日本の流儀がわからないというだけなのです。それは近くで商売するもの同士で教え合えばいいだけなのに、ろくに相手を知ろうともしないで悪口ばかり言うのは、本当に馬鹿げていると思い知りました。

 僕はただの日本人で国際経験が豊かでもなんでもありませんけれども、普通に生きているだけで外国人と接する機会がまぁまぁ生じるようになるのが現代社会です。もはや鎖国ではないのです。人間が国境を超えてあちこち行き交う時代なのだから、頑なに日本人の思想を押し付けるのではなく、ファンの目線も穏やかにキューバ人の個性みたいなものを汲み取る努力をしていくべきではないかと思うのです。

 せっかく継続契約してくれたのだから、なるべく早く怪我を治してベイスターズに戻ってきて欲しいと、優しい気持ちを持つべきではないでしょうか。

以上