ベイスターズを二軍中心に見守るブログ 本店

毎年20~30試合ほどベイスターズ二軍の試合に足を運ぶ我慢強い男のブログ。野球関連の問題提起や将来へ向けた改革提案等も

中畑監督の続投反対論

 今シーズンの閉幕も間近という事で各球団の監督人事にまつわる報道が増えてきました。御多分にもれず我らがベイスターズの中畑監督にも「DeNAが続投を要請」だの「来季は白紙」だのといった、いかにもこの時期らしいニュースが連日のように飛び交っています。

 僕はこのブログの中で時々触れてきましたが、あまり中畑監督の事が好きではありませんので、来季の続投は反対であるという僕なりの考えを書いていきたいと思います。

                 ■

 中畑ベイスターズの象徴的な選手の一人が山口選手ではないかと、僕は考えています。

 山口選手は大矢監督在任中の2009年シーズン途中に抑え投手に任命されて早速18セーブをマークすると、尾花監督にバトンタッチした2010年に30セーブ、その翌年は34セーブとトントン拍子で成績を伸ばし、2010年2011年はオールスターゲームへの出場も果たしました。

 抑え投手は、転向初年度こそまずまずの成績を残す選手が少なくないものの、その後も何年も継続して活躍し続ける事がとても難しいポジションです。元巨人の上原選手や元ベイスターズの寺原選手が苦しむ姿をご記憶されている人も少なくないのではないでしょうか。

 その難しいハードルを乗り越えた日本人選手は佐々木主浩投手や藤川投手など、平成以降に限っても数えるほどしかおりません。

 その難しいハードルをいとも簡単に乗り越えてオールスターにまで選ばれるようになった山口選手でしたが、2012年に転機が訪れます。中畑清監督の就任です。

 中畑監督は山口選手をセーブがつかない場面やビハインドの場面でも容赦なく起用し、山口選手もその期待に見事に応えてみせたものの、数字として残ったのは22セーブと、前年対比35%もの大幅ダウンでした。登板した試合数はプロ入り以来最多の60を数え、防御率は奇跡の1.74という素晴らしい数字を残したにも関わらずセーブ数がこれほどまでに減ってしまったのは、ひとえに監督の采配に尽きました。

 さらにその年のオフに行われた契約更改では減ってしまったセーブ数を理由として現状維持の評価しかして貰えず、そこでついつい飛び出したのがメジャー挑戦発言、でした。

 山口選手のスランプはここから始まりました。

 山口選手は紆余曲折を経て今年から先発に復帰し、一応の成功を収めました。これ自体は喜ばしい事で、中畑監督の功績として数える人も少なくないようですが、それと引き換えに球界を代表する若き抑え投手を失ってしまった事は、まだあまり触れられていないのではないでしょうか。

 先程も触れた通り、何年も活躍し続けられる抑え投手はものすごく貴重な存在です。育成には他球団も大変苦労しています。その様子を以下にまとめてみたいと思います。

巨人 マシソン 今季26セーブ 抑え1年目

広島 ミコライオ 今季22セーブ 抑え3年目

阪神 呉昇桓 今季35セーブ 抑え1年目

横浜 三上朋也 今季19セーブ 抑え1年目

中日 岩瀬仁紀 今季20セーブ 抑え11年目

中日 福谷浩司 今季7セーブ 抑え1年目

ヤク バーネット 今季14セーブ 抑え3年目

 ひとまずセリーグ各球団の抑え投手を挙げてみましたが、ベイスターズと中日以外は外国人選手頼みですし、継続して活躍できているのもミコライオ選手と現在故障中の岩瀬選手くらいしか見当たりません。これはパ・リーグに目を移してみても似たり寄ったりでして、抑え投手を育成するのがいかに大変かを物語っています。

 ベイスターズは長年にわたって先発投手不足にあえいできたため頼りになる先発投手を1枚立てることが出来てとても嬉しいのですが、実は先発投手を1枚立てるよりはるかに難しいのが抑え投手の育成なのです。ましてや外国人枠を食わずに済む日本人選手となると天然記念物レベルの貴重品と言える訳です。

 この天然記念物レベルの貴重な日本人抑え投手を、よりにもよって27歳という若さで先発投手に転向させてしまった事は、万死に値する大失策ではないかと、僕は考えています。

 山口選手の先発転向は昨年と今年の前半にリリーフでうまくいかずに苦しんでいたからやむをえなかったという意見もあるかもしれません。ただそれはどうしてスランプに陥ってしまったのか適切なアプローチをしなかったからだとも考えられます。4年も続けて抑えを務め上げた日本人選手の貴重さ、重要さを理解していたならば、きっともっと大切に扱ったのではないでしょうか。

 他球団のように抑えは外国人に任せればいいという意見もあるかもしれません。現に昨年は途中からソーサ選手が抑えを務めていました。しかし外国人選手の起用には枠の制限があります。今年リリーフで貴重な働きを見せたソト選手も枠の都合で泣く泣く2軍落ちさせたのは記憶に新しい所です。ベイスターズが外国人野手に頼らないチーム作りをしているならともかく、現状でさえファームで調子の良いソーサ選手やソト選手を枠に入れられないようでは、抑えを外国人に任せる選択肢など取りようがありません。

 三上選手が来年も今年以上に活躍してくれるのならば水に流せる話ですが、大学社会人卒のリリーフピッチャーが2年目以降もコンスタントに働き続けた実績がベイスターズには致命的に欠けていますから、そこに期待するのは酷というものです。

 一見すると成功したかに見える山口選手の先発転向は、後々に重大な禍根を残すものだったと言えるのではないでしょうか。

                       ■

 山口選手の先発転向は中畑監督の計画性の甘さを明らかとする一つの事例でしたが、このような事例は他にもあります。監督就任3年目にしていきなりレギュラークラスの内野手を3人も外野にコンバートした事もその1例です。

 内野でくすぶっているとか打撃に専念させたいとかの理由で外野にコンバートするケースは過去他球団にも盛んに見られましたが、いきなりレギュラークラスを3人も持っていくとなると異例です。ましてや監督自身が1年契約で結果が求められる立場にありながら、慣れるまで時間を要する、いささか遠回りの戦略を打ち出してきたというのも不可解です。

 そして、そのツケが一気に出てしまいました。スランプに陥ったバルディリス選手の後釜になるサードが誰もおらず、コンバートしたはずの筒香選手を戻してみたり、もう何年も守っていない後藤選手を守らせてみたりもしました。ブランコ選手が故障してファーストが手薄になった時は松本選手や金城選手がファーストのバックアップに入れるようにファーストの練習をするようにもなりました(ファームではファーストで試合に出ています)。

 コンバートそのものは否定しないものの、後先考えずに性急にレギュラークラスを3人もコンバートしたりすれば、どちらかが手薄になって故障者が出た時に大慌てになる事くらい容易に想像できたはずです。実際中畑監督は初年度に危機管理と称して山崎選手にキャッチャーの練習をさせた事もあった位です。

 それなのに、どうしてこんな無茶を契約最終年にやるのでしょうか。2年契約の最初に将来を見越して荒療治をやるのとは意味が違います。そもそもの計画性が無いからこうなるのです。

 コンバートをすることで守備の練習に意識と時間を奪われて結果として打撃に悪影響を及ぼすことはよく知られています。内川選手がFAで出て行く前もその事をしきりに漏らしていたではありませんか。今季打撃不振の選手が少なくないのも、そういった影響が少なくないのではないでしょうか。

                        ■

 2014シーズンは9月に入ってもクライマックスシリーズ進出の芽が絶たれていないというのは喜ばしいですが、これを中畑監督の功績として来季続投に結びつけるのはいかがなものでしょうか。

 今シーズンのセリーグは例年と比べてとても低レベルな争いを繰り広げています。ピッチャーの最多勝争いが低水準なのもそうですが、これまで優勝争いの常連だった中日や阪神が主力の故障や世代交代が大きく響いて早々優勝争いから遠のいているのも象徴的です。

 それに加えて、ベイスターズの歴史上最大規模の戦力補強が行われているのも見逃せません。久保選手とモスコーソ選手という二桁勝利級のピッチャーが2人も補強され、野手でも昨年加入のブランコ選手に加えてキューバの至宝グリエル選手まで獲得してくれました。こんなに贅沢に大補強してもらっているのに、どうして5位後退にヒヤヒヤするような戦いぶりをしているのでしょうか。それは結局いくら戦力補強をしても指揮官が宝の持ち腐れをしてしまうからではないでしょうか。

 観客動員が増えた事を監督の功績としている人もいるようですが、増えた観客動員のうち中畑監督のおかげで来場した人は一体どれほどのものでしょうか。ファンクラブの加入者数が大幅に増えている点やハマスタに行って見た限りでは、むしろ球団の営業努力や高田GMが連れてきたタレントたちのおかげの方が要素としては大きいのではないでしょうか。

 また、高田GMの手腕については僕は大変素晴らしいと考えています。

 長年先発投手が課題とされてきたベイスターズで、たった2年でここまで先発ローテを整えた実績はダテではありません。久保選手やモスコーソ選手もそうですし、井納選手も高田GM体制で最初に獲ったドラフト選手です。10年以上先発が先発がと嘆き続けたのが嘘のように、あっという間に整えられてしまったのですから、その功績は素直に評価すべきで、ですから来季以降も継続してお願いしたい限りです。

 とにかくベイスターズには優勝争いできるだけの素地が整ったというのが実感としてあるだけに、来季以降の監督はしっかりと計画性を持った、勝てる人材を真面目に考えて頂きたいと思います。テレビに出て多少理屈っぽいことを喋っているから「この人は理論派で監督向きだ!」みたいな安直な事を言わずに、本気で人選して欲しいのです。

 僕の希望は牛島監督再登板ですが、それはともかく、中畑監督の続投だけは断固として反対の声をあげていきたいと考えて、そのように主張いたします。

以上