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ベイスターズを二軍中心に見守るブログ 本店

毎年20~30試合ほどベイスターズ二軍の試合に足を運ぶ我慢強い男のブログ。野球関連の問題提起や将来へ向けた改革提案等も

乙坂智という熱い男

 僕はアマチュアの野球にあまり興味が無いため、自らの意志で高校野球やノンプロの試合を観戦した事はほんの数年前まで1度もありませんでした。

 中学生の頃の野球部で顧問の思いつきで地方予選を見に行ったのと、小学生の時に所属していた少年野球チームの1年先輩が甲子園に出場したのでその応援に行ったのと、あとは大阪ドームベイスターズ開幕戦を見て、その翌朝に友達の誘いで甲子園に行ったのが、僕の僅かな経験です。

 ただ、神奈川高校野球の聖地ともいえる保土ヶ谷球場の近く(自宅で声援が聞こえるほど)に引っ越したのもありまして、せっかくだから一度見に行ってみようと、生まれて初めて自らの意志で訪れたのが2011年夏予選の横浜高校対横浜商業高校の試合でした。

 神奈川は高校野球のファンが非常に多いとはかねてから聞いていましたが、いざ行ってみると、まさか2回戦でこんなにたくさんのお客さんで溢れかえっているとは思ってもみませんでした。普段は横浜スタジアムでも内野指定に座る僕ですが、あまりの混雑ぶりに内野の席を得られず、仕方なくライト側の芝生に座り、崎陽軒シウマイ弁当を食べながら見ることにしました。

 その試合で、ちょうど僕の目の前でライトの守備についていたのが、今ではベイスターズのホープである乙坂選手その人でした。

 その試合で乙坂選手から受けた印象としては、守備が高校生離れした手堅いものであった事や足が非常に速かった事もありましたが、何よりも強烈だったのが、あの自らでチームを鼓舞しようとする、有り余るほどのファイティングスピリッツでした。

 1塁へのヘッドスライディングもそうですし、味方の攻撃時にベンチで声援を送るときもそうですし、自分がネクストサークルで前の打者を見守るときもそうでしたが、こんなに激しい選手を見たのは西武ライオンズ黄金時代の石毛選手以来だなと、そして、こんな選手がベイスターズにぜひとも欲しいんだと、まるで自分がベイスターズのGMにでもなったかのような気持ちで乙坂選手の一挙手一投足に魅入られていきました。

 やがて時は過ぎ、2011年のプロ野球ドラフト会議。僕は歓喜に打ち震えました。あの乙坂選手が、まさか本当にベイスターズに入団するとは!しかも、これは後で知ったことですが乙坂選手は子供の頃から大のベイスターズファンで、プロ入りを渋る親御さんを断固とした強い意志で説得し、そうして掴んだベイスターズのドラフト5位の座であったと、二重三重の喜びに満ち溢れたのでした。

 かくして乙坂選手はベイスターズに入団しました。幸いにして二軍監督は若手起用に定評がある山下大輔さんが就任したこともあって、同期の桑原選手とともにレギュラーとしてほぼ全ての試合に起用されました。桑原選手や、やはり同期の高城選手が1年目から1軍の試合出場を果たす中で後れを取った格好にはなりましたが、1年を通して大きな怪我もなく、プロ入り前からの長所である俊足と堅守に着実に磨きをかけていきました。

 プロ入り後の乙坂選手といえば忘れてならないのが礼儀正しさです。

 プロ野球は縦社会ですから皆さん礼儀のイロハみたいなものは一通り教わってこられるものですが、乙坂選手の礼儀は並ではありません。試合で打席に入る際、必ず球審とキャッチャーに1回づつ丁寧にお辞儀をしてからバッターボックスに入るのです。例え球審が違う方を向いていても、例えキャッチャーが年下の選手でも、相手によって態度を変えずにしっかりとお辞儀をするのです。ここまでできる選手は、僕は1人も見たことがありません。

 お辞儀の有無がプレーの結果に結びつくとは思いませんが、これは心の問題です。僕は子供の頃の6年ほど空手の道場に無理やり通わされていたのでなんとなくわかる部分があるのですが、お辞儀は自らの心を清める効果があると思います。清められて澄み切った心で、この1打席に向かう。まさしく武士道です。この一連の動作を見るだけでも、ファームの試合を見に来た甲斐があると感じさせられます。

 あとはやはり、最近の若い選手には見られない非常に強い上昇志向が感じられます。

 近年のベイスターズに入団してくる新人選手は、どこか自己主張が控えめな選手が目立ちました。「俺が俺が!」とグイグイと前に出てくるような選手は殆ど見られませんでした。あるとしても、藤江選手や福山選手のような一発ギャグができるといったようなグラウンド外の話題ばかりでした。数年前に退団したとある選手などは、あまりに控えめ過ぎて自ら退団を申し出てしまった程でした。

 それが乙坂選手が出現したおかげで、同期の桑原選手や高城選手や飛雄馬選手や渡邊雄貴選手に良い意味でアグレッシヴさが広がっているように感じられます。まさに切磋琢磨という雰囲気がピッタリで、これは本当に素晴らしいと心から嬉しく思っています。

 今年の乙坂選手は交流戦でプロ入り初打席初ホームランをかっ飛ばしたまではいいものの、そこからは同期の桑原選手の後塵を拝しています。本人としてみれば恐らくは1軍の試合でバリバリと頑張れるだけの準備は整っているに違いないでしょうが、チーム事情がそれを許してくれません。とてももどかしい時期を過ごしているのではないかと思います。

 ですが、そうは言っても彼はまだ前途ある20歳の若者です。このもどかしい日々は、彼が将来ベイスターズのキャプテンとして羽ばたくための、心の鍛錬の時ではないでしょうか。ここで培った平常心や我慢の心が、ベンチ全体への目配り気配りのできる球界1のキャプテンとして成長させてくれると信じています。

 今はとても難しい時期を過ごしているとは思いますが、乙坂選手こそが将来のベイスターズ黄金時代を中心となって盛り上げる存在であると信じていますので、腐らずに頑張って欲しいと応援しております。

以上