育成選手制度に疑問を呈したい

　今日はベイスターズのみならず、球界全体の問題として育成選手の制度に疑問を呈したいと思います。

　さて、今年はプロ野球界に育成選手制度が創設されてから１０年目のシーズンとなります。その間に良いニュースも悪いニュースもありましたが、ここらへんでこの制度を総括すべきではないかと考えています。

　というのも、「育成選手」と呼ぶには躊躇いが生じるほどのキャリアを持つ選手が育成選手となったり、支配下登録で入団した選手が大怪我を負って長期間試合に出られない時に便宜的に登録するのに使われたり、本来の目的を逸脱している印象が拭えないからです。

　過去には巨人の山口投手のように育成選手から一流選手へ駆け上がった素晴らしい事例があるのもわかりますが、全体を俯瞰して見た場合、そろそろ抜本的に手直ししなければならない時期を迎えているのではないでしょうか。

　そもそも、支配下登録の上限を７０人としなければならない理由とは何でしょうか。これの上限さえなければ、そもそも育成選手などという別枠を設ける必要など無かったのではないでしょうか。チームの財政力によってたくさんの選手を抱えられるチームとそうでないチームとで分かれる可能性がありますが、それは育成選手制度が存在する現在においても既に生じている事態です。巨人やソフトバンクやロッテには育成選手が物凄い数所属していますが、日本ハムには育成選手が１人もおらず、支配下登録の選手も毎年６５人前後で抑えられています。

　支配下登録選手には最低年俸の問題もあります。育成選手が２４０万円なのに対し支配下登録選手の最低年俸は４００万円です。数十人に支払うものですから決して小さな額ではありませんが、そうであるならば、支配下登録選手の最低年俸も２４０万円にしてしまえば良いのではないでしょうか。選手は、それが嫌なら辞めれば良いというだけの事です。

　あとは、大勢の選手を抱えられるチームで３軍のリーグを創設してはどうか？という考えもあります。

　あまり経済的負担をかけられないので、例えば巨人もソフトバンクもロッテも３軍だけ宮崎県に固まって、そこで徹底的に鍛えるのです。宮崎県は毎年フェニックス・リーグで日韓からたくさんのチームが集まって試合をやりますので、それだけの試合数をさばけるだけのノウハウが有るだろうと思いますし、観光資源の一つにしていただいても良いだろうと思います。韓国のプロ野球にも２軍があるそうなので、韓国の２軍と日本の３軍で宮崎リーグを年間を通して実施するのでも良いと思います。

　もしくは、南米の独立リーグにもチームを持って、そこに選手を送り込んで現地のハングリーな環境でビシビシやるのもいいだろうと思います。

　選手の枠に自由度が増せば、個々のチームが独自性のある育成スタイルを確立できるでしょうし、選手の能力底上げにも繋がっていくのではないでしょうか。

　毎年ファームを見ていて思うことですが、とにかく試合数が少なすぎます。ファームの選手が目指すべき１軍の舞台は１年で１４４試合こなすのに、鍛錬の場であるファームの試合が１０８試合しか行わないというのは、アベコベなのではないでしょうか。よく１軍定着して間もない選手が「シーズン通して１軍でやった経験が無いから疲労が心配」などと言われるのを耳にしますが、そういう問題が定番化しているのを見過ごして良い筈がありません。

　むしろ公式戦だけで年間１６０試合くらいこなせるようでないと、ファームの選手に実戦で鍛える場を与えられないのではないでしょうか。実際、日本ハムが選手を６５人しか抱えないのは、それ以上抱えると選手に充分な実戦経験を積ませられないからだと言います。

　また、そういったフレキシブルに育成環境を整備していく上で、現状の育成選手制度の使い勝手の悪さが足手まといになってはいないでしょうか。プロ野球に入団させたい前途有望な選手で、しかしモノになるまでに少し時間がかかりそうだという場合、支配下選手にしてしまうと枠を圧迫し、育成選手にしてしまうと満足な待遇を与えられず、板挟みになります。

　最近は田中将大選手や前田健太選手やダルビッシュ有選手の大成功によって高卒入団の選手に再び注目が集まるようになりましたが、そうはいっても一部の超一流を除けば、高卒選手は育成に時間がかかるのが当たり前です。その育成に時間のかかる選手を、３年で一応の上限を迎える育成選手で契約するというのはいくらなんでも無理があるのではないでしょうか。

　というわけで僕は育成選手の制度を今季限りで廃止にし、その代わりに支配下登録の上限を撤廃するのと、最低年俸を２４０万に引き下げる事を提唱したいと思うのですが、皆様はいかがお考えでしょうか？

以上